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ニュース&コラム of 東京警察病院 脳神経外科医 楚良繁雄のページ

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コラム1 : 上手な医者のかかり方

あなたの訴えを医者に理解させるために

 体調が悪いから病院に行ったのに医者と面談してかえって不安が強くなったり,不愉快な思いをしたことはないでしょうか.ほとんどの患者さんは,診療科など関係なく安心したくて来院されていることは私たちも理解しています.患者さんが診察室に入ってくるところから注意深く観察しても,百発百中で正しく診断できるような名人の域に達している医者ばかりではありません.医者に訴えを説明して,質問に答えて医者と患者の共同作業で正しい診断に到達することが有効な治療を開始するための第一歩になります.

 はじめて受診された患者さんから,まず説明していただきたいことは主に以下の3つです.
①.症状はいつから始まり,その後,良くなりましたか? どんどん悪くなってきていますか?
②.症状の性状はどのようなものですか? それがどのくらい時間続きますか
③.現在の症状に対して今までに何かしらの治療をしていますか? 現在他の病気の治療中ですか?

まず①から補足説明致します.症状が始まり,その後の経過によって診断と病気の程度が推測されます.“だいぶ前から”,“何ヶ月も前から”,"どこそこに住んでいたとき”などは,それぞれの患者さんの意図していることが全く異なるので残念ながらあまり参考にできません..例えば“昨年の12月頃から”,“3ヶ月前から”,“先週の木曜日の午後3時頃から”などと行っていただけるとポイントが明確になります.② “何ともいえず気持ちよくない感じ”,“どこというわけではないけどたまに痛くなる”などと説明しないで,“後頭部にズキンズキンするような頭痛が,2〜3時間続くけれど,鎮痛薬で改善する”などとどの部位がどのような性状で具合が悪いか具体的に訴えていただけるとコミュニケーションが取りやすくなります.③現在までに何かしら薬剤を使用したけれど効果がなかったなどの情報や,高血圧や糖尿病など現在治療中の持病は何があってどのような薬を内服しているかあらかじめ服薬手帳などを持参していただけると非常に参考になります.これらから症状と診察と画像所見などを検討して正確な診断に向かって進んでいくことになります.

 病院の外来診察の実態をあまり言うべきではないことは承知の上なんですが,少しだけ患者さんにも知ってもらいたいことがあります.外来診察には予約枠があって私の場合には,30分間に5人診察することになっています.この設定は,内科などに比べるとかなりゆったりした時間配分になっていると思います.しかし,実際に5〜6分で診察を終えられる患者さんは,安定していていつも同様の処方や検査をしている人に限られてしまうでしょう.新しく症状が出現した方や新たに検査を追加したりする場合には,とても6分では足りません.ましてや初診の患者さんで脳神経外科的な治療が必要だったり,入院が必要な場合には,それらの必要性などを説明すると少なくとも一人あたり30分程度は時間がかかります.毎週初診の方が1日7〜8人はいて,緊急性に応じて予約枠の合間に入ってきます.また,忙しくて予約日にこられなかった患者さんも飛び込みで入ってくると本当にてんてこ舞いになってしまいます.根本的な解決策は,外来診療する医者を増やすか,予約枠を少なくして診療時間を長くすることですが,スタッフの人数も限られています.私は朝8時から脳神経外科のカンファランスと回診を終えてから外来診察をする毎週金曜日や第一土曜日は9時から外来診察を始めますが,夕方4時頃まで昼ご飯も食べることなく(トイレには行かせてもらいます),診察を続けてもなかなか予約時間通りには行かないのが実情です.本当に申し訳ありませんが,お許しください.


P.S. 毎週金曜日午前の脳神経外科外来診療枠が1つ増えましたので,お待たせする時間も少なくなったと思います.