片側顔面けいれん　54歳女性 of 東京警察病院　脳神経外科医　楚良繁雄のページ

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顔面けいれん手術体験記

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　５４歳女性

２０１０年１月、私は東京警察病院で楚良先生の執刀により右側顔面痙攣の手術を受けました。その３年位前から右眼の下瞼がピクピク動き始め、半年の内にはそれが右側の口元まで広がり、頻度も程度もひどくなって行きました。増していく不快感に我慢出来ずに、地元の脳神経外科を受診しました。私の場合、主人が１０年位前、同様の症状になり○○○病院の「脳神経外科」で手術を受け、すっかりよくなっていたので、迷わず「脳神経外科」を受診しました。

MRIなどの検査の結果、やはり脳の血管が顔面神経に触れて起こる「顔面痙攣」でした。治療法は薬、注射、手術があり、根治するには手術しかないとのこと。主人の例もあり手術するのが最善だと思いましたが、全身麻酔で頭蓋骨に穴をあけて・・・というのは少し怖くて、医師の指示もあり、まずは薬を飲むことにしました。でも眠くなるだけで効果はなく、次にボトックス注射を試すことにしました。これは確かに１カ月間位、痙攣が治まりましたが、顔面神経を麻痺させるので、笑っても口元は下がったまま、うがいをしても口から水が漏れてしまって困りました。そのうえドライアイにも悩まされました。注射代が高額で痛い割には効果が薄く、最後は注射を打ったときに右瞼の血管に当たって内出血を起こしてしまい、お岩さん状態になったのをきっかけに、３回程で止めました。もう手術しかないと腹をくくり、医師に相談し顔面痙攣の手術を得意としている病院の紹介をお願いしたところ、東京警察病院に紹介状を書いてくれました。

２００９年８月、紹介状を持って中野の東京警察病院を受診しました。初めに診察して下さったのは楚良先生ではなく別の先生でした。受診後すぐに手術の運びになるものと思い込んでいたのですが、手術には慎重で、もう一度薬を試して本当に効き目がないのか、手術するほどの症状なのか、またいくつか検査をした上で手術に適か不適か確認する必要もある、とのことでした。もう手術しか道はないと思っていた私は、もし手術不適とされたらどうしようと心配しました。

MRIやら造影CT検査やらいくつかの検査の結果、顔面痙攣手術を得意とされる楚良先生の診察を受けて、手術できると決まったのは１２月になってからでした。手術方法や成功の確率、手術の危険性など、先生の説明はわかりやすく、こちらの質問に対する丁寧な答えにも安心感を覚えました。

２０１０年１月１０日入院、１３日手術と決まりました。顔面痙攣は命に関わるような病気ではないので、緊急に手術が入ったらそちらを優先し変更もあり得るとのことでした。幸い緊急手術は入らず、その日の朝、手術室に入ることができました。両足の膝から下にエコノミー症候群となるのを防止する、足を締め付けたり緩めたりする器械を着けられました。以前、全身麻酔で手術を受けたことがあるのですが、その時と比べて随分進歩しているんだと感心しました。

手術後、麻酔も覚めてそのまま集中治療室に入りました。点滴につながれてエコノミー症候群防止装置もそのまま、動けない状態での朝までは果てしなく長く思え、入院中この時だけはつらく感じました。寝返りを打つ時はナースに声をかけて動かしてもらうのですが、寝たきり老人はこんな感じかしらとも思いました。

翌朝、病室に戻されて、点滴チューブを着けながらでも自由に動いてよいと言われた時は、とてもうれしかったです。気がつくと、ピクピクはなくなっていました。その後何日かで点滴チューブもはずれ、傷口は痛むものの痙攣はすっかり治まり、抜糸前なのにシャンプーもOK、毎日シャワーを浴び、とても爽快でした。術後のMRI検査で手術がうまくいったことも確認でき、何よりあの勝手に動く不愉快な痙攣がなくなったことは「感謝」の一言につきました。抜糸が済み退院したのは、手術から１週間後でした。新しい設備もさることながら、スタッフの方々のお蔭で入院から退院まで、快適な病院生活でした。

退院後ずっとピクピクすることなく、もう治ったと安心していたところ、１カ月位たってまた右眼の下が痙攣し始めました。程度や範囲はずっと小さいものだったのですが、忘れかけていた感覚を思い出し、ショックを受けました。もう血管と顔面神経は触れていないはずなのに？・・と不思議でしたが、痙攣が出たり治まったりを繰り返して、徐々に治っていくケースは珍しいことではないとのこと。私もそのケースだったらしく、３日間ほどでピクピクは治まり、その後、数回同じようなことを繰り返しました。

術後１年近くたった現在は、自分が顔面痙攣で悩まされていたことなどほとんど忘れています。手術の傷あとも、術後２，３カ月は冷たい風などが当たると痛みを感じていましたが、今では全く気になりません。手術してよかったと、つくづく思います。

２０１０年１２月