三叉神経痛 31歳男性 of 東京警察病院 脳神経外科医 楚良繁雄のページ

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三叉神経痛治療体験記

 まず初めに、私の場合は夏しか症状が発生しませんでした。
初めて右眉の上あたりに違和感を感じたのは2007年夏でした。シャワーを直接顔に当てた時に、右眉の上あたりにビリッと電流が流れたような痛みを感じました。この症状がたまに起きるようになったので、怖くなりシャワーを直接顔に当てないようにしました。
 2008年夏は特に症状はなく、2009年夏には朝の洗顔をした際に右眉に激痛が走る事がありました。
 そして、2010年夏になると本格的に症状が悪化し始めました。何もしていなくても右眉のあたりにピリピリと軽い痛みを感じ始め、その数日後には食事をしようと咀嚼すると激痛が走るようになりました。すぐに自宅近くの林脳神経外科クリニックへ行き、血液検査やMRI検査を受けました。その結果、三叉神経痛と診断され、痛み止めのテグレトールを処方してもらいました。この薬を飲めば多少は痛みが軽減されましたが、めまいや眠気などの副作用が強かったです。咀嚼する際の激しい痛みはあまり緩和されず、流動食中心の生活になりました。バナナをミキサーにかけてシェイクにしたり、スープやお茶漬けしか食べなくなり、最終的に4週間で体重が5kgも減りました。物凄い激痛が走るので歯磨きもできませんでした。唾を飲み込むだけで痛むので、横に寝ている時以外は常に痛みを感じていました。
 そして、ある日、ソファで昼寝をしている時に携帯電話が鳴ったので、慌てて起きました。すると、今まで感じたことのない激痛を右目の奥の方に感じました。そのうち頭の右側も激しい鈍痛が襲ってきて、脳の血管が破れたのではないかと思う程の痛みでした。結局、この痛みは30分程続き、救急車を呼ぼうかと思った時に治まりました。その後、慌てて林脳神経外科クリニックへ駆け込み、群発頭痛の可能性もあると診断され、より詳しい検査を受けるために東京警察病院を紹介されました。
 私はすぐに東京警察病院へ通院し、テグレトールの処方や、群発頭痛の疑いもあったため高濃度酸素の吸入をしてもらいました。三回目の通院で楚良先生に診断してもらい、私は一日でも早く激痛から解放されたかったので手術することを即決しました。この通院の間も、調子が悪い時は、朝起きてすぐに口を濯いだ時に右目奥の激痛と頭の激しい鈍痛の発作が起きたりしました。
 そして、9月1日に入院し、術前検査のMRI検査などを受け、9月3日に手術を受けました。入院してから手術するまでの間は、意外にリラックスでき、夜も熟睡できました。手術当日も、病気の痛みから解放される喜びの方が大きく、手術に対する怖さはありませんでした。手術開始時間になり、徒歩で手術室に到着。手術台に横になり、点滴で全身麻酔をしました。気付いたら夢を見ていて、夢から覚めたらもう手術は終わっていました。手術後は集中治療室に運ばれて、15時間ほどそこで過ごしたのですが、私にはこの時間が一番苦痛でした。術後の頭の傷が痛み、腰も痛く、体中に管がつながれていて全然眠れず、集中治療室の独特な雰囲気もあり、気がおかしくなりそうでした。看護婦さんに頼んで自分の病室から携帯音楽プレイヤーを持ってきてもらい、自分の好きな音楽を聴くことで何とかやり過ごすことができました。手術後五日間くらいは傷がかなり痛むので痛み止めの点滴を受けました。また、頭を包帯できつめに分厚く巻くので、頭が重く、寝辛かったです。
手術した翌朝、集中治療室で歯磨きをするとまだ痛みが発生しました。テグレトールを併用しながら様子を見て、二日間は流動食で過ごしました。次第に、流動食を飲む時に痛みを感じなくなったので、粥食に切り替えました。固めのおかずを噛んでも痛みを感じなくなり、軽めの歯磨きをしても痛みを感じなかったので、粥食にしてから三日で普通食に切り替えました。普通に食事できるようになったことが嬉しく、手術をして良かったと思いました。結局、手術後に痛みを感じたのは最初の集中治療室での歯磨きだけでした。
 退院してからも痛みは全く無く、食事も歯磨きもできるようになり普通の生活に戻る事ができました。
 手術の影響で、物が二重に見えてしまう目の軽度の合併症が発生してしまいましたが、時間の経過とともに治るということで、痛みが完治したので手術をして本当に良かったです。