三叉神経痛　49歳女性 of 東京警察病院　脳神経外科医　楚良繁雄のページ

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三叉神経痛からの解放 ～ 微小血管減圧術　体験談 
発症
　平成２０年秋、シャワーを浴びていた時のことです。右目近辺にシャワーを当てた瞬間、刺すような痛みが走りました。何か目に入ったのかしら？　新しくつけたファイバー入りのマスカラが原因？？翌日もまた、シャワーが顔に当たるとシパッとする瞬間的な痛み。眼球を押しても目を洗ってみても何も痛みがありません。

相談
　会社の産業医に相談してみると、「顔の片側だけに瞬間的な痛みがあるのなら、三叉神経痛の可能性が高い」と言われました。かかりつけの内科医院でメチコバールを処方してもらうと良いと勧められ、早速内科医院で受診するとやはり、三叉神経痛に間違いなさそうだという事で、メチコバールとノイロトロピンを処方されました。顔へのシャワーが怖くなり、毎日の生活で、シャワーを顔に当てられなくなりました。その分入浴時間もかかります。

自覚症状
　その後、３ヶ月～4ヶ月くらい過ぎた頃、はっきりとした痛みを感じるようになります。右眉から頭の上に向けて、電気が走るようなビリッとした痛み。特に朝に強く痛みます。鼻をかんだ瞬間、洗髪後にタオルで頭をゴシゴシした瞬間に、いつも右眉から頭の上に向けて激痛が出るようになりました。　化粧をする時も、顔に触れた瞬間に激痛が走るので、途中で化粧を止める事があります。歯ブラシも激痛を伴う事があるので、おっかなびっくりです。うつむいた時に激痛が起こることもありました。これ以上痛みが強くなったらどうしよう、という恐怖心で、洗顔や歯ブラシをゆっくりと加減しながらするので、とても時間がかかります。大好きなナッツ類も噛むと激痛が襲ってくるので食べられなくなりました。信号の変わり目に走ろうとした瞬間、最初の一歩で激痛が来ます。階段を下りる時の揺れも激痛に繋がります。強い風が顔や頭に吹き付ける度に電激痛です。バスタオルでガードしたり、コートのフードを被って外出する事も多くなりました。風の強い日は、咄嗟に風をよける必要がある為、鞄を盾にして奇妙な姿で歩いていました。
　子どもが私の頭や顔を触った瞬間、怒鳴りつけたこともあります。痛みの苛立ちで、子どものやる事がいちいち気に障り、口うるさくなり、更に痛みが増し、夫にもきつい口調で言い放った事は数知れません。病気は人間関係をも破壊して行きます。
　ある日、勢い良くしゃがんだ瞬間、右の眼球奥から頭まで電激痛が１分以上何回かの往復で起こりました。救急車を呼びたい心境でした。

決心
　これを期に、本格的に治療を考えなければ、と心に決めました。
平成21年2月、地元の総合病院に行き、脳の病気があるかどうか調べてもらい、腫瘍等は見つからず一安心。その総合病院では、三叉神経痛の治療は行わない為、別の病院を探し始めるようになります。自分の周りに三叉神経痛を患った人は誰もいないので、インターネットで調べ、漢方薬サンプルを取り寄せたり、針治療を検討したり、オルゴール療法や顔のリハビリ療法を検討したり、ガンマナイフ、サイバーナイフ、神経ブロック等、必死で情報をかき集めるようになります。
　この頃は痛みを誘発する部位が広がり、歯を磨くことが出来なくなっていました。また硬い物を噛むことも出来なくなっています。ガムも噛めず、なるべく口を動かさないように気をつける生活でした。花粉症なのに、鼻もかめず、マスクで鼻を隠し、洗顔もまともに出来ず、鏡を見たくない日が続きます。

初診
　平成21年4月、かかりつけの内科医院に相談し、脳神経外科で診察を受けようと決心し、楚良先生を紹介してもらいました。根本からの治療を望むつもりで、脳神経外科で楚良先生の診察を受けました。先生は、細かく症状を確認して、穏やかにわかりやすく病状や治療方法について説明してくださいました。
　ＭＲＡで血管が三叉神経を圧迫している箇所が確定出来たこともあり、夏に外科手術をお願いする予定でした。手術を待つ間は、テグレトールを処方していただき、痛みが出た時は、初めて薬の効果を実感しましたが、眠気との格闘です。思考が鈍くなり、仕事のペースが落ちていると感じます。それでも痛みが出ると薬を飲み、いつも、頭がぼんやりしていました。

薬疹
　6月になり、腕、足が痒い。痒みはあっという間にほぼ全身に広がり、ついに薬疹です。地元の内科医院で診察してもらい、プレドニンを処方され、テグレトールの服用を中止。プレドニンの副作用でムーンフェイスになり、２ヶ月かかってやっと薬疹が消えました。薬を長く飲み続けるのは恐ろしいと思います。また、薬を忘れずに毎日服用するのも精神的な負担に感じます。
　不思議なことに、三叉神経の痛みが、テグレトール服用中止から全く出なくなりました。夏に予定していた手術は、保留になり、様子をみること約１年。

再発
　あの恐怖の電激痛の予兆が表れ始めたのは、平成２２年6月。会社の床カーペットの清掃後、巨大な扇風機を一日かけていた日があり、その晩から激痛が出てきました。嫌な予感は的中し、休んでいた三叉神経痛が風で触発されました。
再発したらすぐに手術をお願いしようという考えはまとまっていました。
　楚良先生に相談し、手術の順番待ちの間は、ガバペンを処方してもらいました。テグレトールよりは弱いですが、やはり眠気はきます。また眩暈が強く出るときもあります。
毎日薬を服用してもやはり痛みは出ました。薬疹がいつ出るかと心配もありました。
　痛みの多い日は、一日１００回以上激痛が出て、会社の仕事にも影響が出ます。
朝、お化粧をする時は、神経を集中し痛みが出ない事を祈りながらそーっと顔に触れていました。ハ行とマ行の発音の言葉を発した瞬間、激痛で動きが止まります。冷たいものも食べたり飲んだり出来なくなっていました。前歯を使う麺類も食べられません。コンタクトレンズもはずす時に眼球に触れたら激痛が起こったのでコンタクトも使用きません。笑った瞬間にも激痛が出るので、毎日恐る恐る生活する状態です。毎日顔を合わせている家族や会社の仲間は、激痛がでた瞬間、わかるようになってきました。

手術
　手術というとリスクもあります。でも、これから先何十年も薬を飲み続けるほうが怖いと考えます。母は２０年近く関節性リウマチの薬を飲み続け、副作用で重度の糖尿病を併発しました。電激痛が襲ってくる恐怖をいつも予測しながら生活し、薬を飲むのは嫌です。先生を信頼し、一日も早く正常な状態に戻れる事を強く心に思い描き、手術をお願い致しました。これまで大きな病気をしたことも無く、全身麻酔も初めてでしたが恐怖心は全く無く、とにかく、早く痛みから解放されたいと願うばかりでした。
　手術当日は幾分緊張しましたが、手術が終わり、目覚めたときは、「もう、終わったのですか？」が感想です。楚良先生から、私の三叉神経は、細い血管が巻きついて、９０度くらい捻じ曲げられていた聞き、驚きました。そんな状態なのに、手術をしないでいたら今後どんな事になっていたかと考えると身体が凍りつきました。

痛みからの解放
　麻酔から目覚めた直後から、全く痛みが出てきません。手術の翌日から、歯ブラシをしても洗顔しても全く痛くないのです。あれだけ痛みの恐怖に怯えながら生活していた日々が信じられません。
　退院し、職場復帰し、薬からも解放され、頭がすっきりとして、元気に通勤しています。手術をした場所は目立たず、言わなければ、誰も脳神経外科手術をしたとは信じられないでしょう。

選択
　こんなことなら、もっと早く手術していれば良かったというのが本音です。
ちょっと遠回りしましたが、インターネットでいろいろな情報を得て、さまざまな治療方法を検討したのは良い勉強になりました。だからこそ、私は一番安心してお願いできる微小血管減圧手術を選びました。

感謝
　執刀医の楚良先生、脳神経外科の先生方、ＩＣＵの看護師さん、入院病棟の看護師さん、検査技師の皆様に心から感謝いたしております。本当にありがとうございました。
　また、手術後のケアを、今後も継続して診ていただけるとのことで、安心しております。これからもよろしくお願い致します。